2024.1.2羽田空港事故
40年以上にわたってパイロットとして従事してきた立場から2024.1.2の羽田空港の事故に関してFBに何件か感想を投稿しました。
2024.1.2年明け早々、47年前のスペインのテネリフェ空港での事故を彷彿とさせるようなショッキングな事故でした。
アーカイブされた管制無線の聞き取りなどから事故時の管制無線を聞き取ると、海保の機体には1745分15秒に
「JA722A Taxi to Holding Point C-5」(滑走路手前のC-5待機位置まで地上滑走せよ)と指示が出ているが、それに対する応答はカッティングして交信が聞き取れない。
一方でかつては「滑走路内に入って待機せよ」という指示は「Taxi into position and hold」という用語だったが、これが先の指示と紛らわしいということで随分前に「Line up and wait」という用語に世界中で改訂された。
JAL516は「Cleared to land, Ranway 34R」(滑走路34Rへの着陸を許可する)という指示がC滑走路の周波数124.35に移行する以前に東京アプローチから羽田のC滑走路の管制官に確認の上で許可が発出され、それを復唱している。
17:49に事故とは別のA滑走路の周波数118.1から
“All concearned for Runway 34R, Accidents have been observed on the runway 34R. Standby for further instructions.”
とボイスがあり、あとは無音に、、、
しかし、滑走路上で2機の航空機が激突などというのは、誘導路やエプロンでの接触事案は別にしてテネリフェ空港事故以来約50年間発生もしてなかった事故で、日本にある130の飛行場、世界に何万とある飛行場で何百万回、何千万回繰り返されてきてこの何十年も発生しなかった、それだけICAOの規定が遵守されてきていたのにそんな事故がこの日本で発生したということに驚きを禁じ得ないショック。
羽田事故続感:
C-5インターセクションまでの地上滑走を許可した管制指示に対する海保機の復唱はアーカイブされたボイスデータではカッティングして聞き取れないが、仮に内容を復唱していながら勘違いしていたとしても、C-5は滑走路に対して直角なので進入経路のファイナルは視認できるはず。
パイロットなら鉄則である滑走路進入時に進入経路を目視確認した上での「ファイナルクリアー」の発声確認をしていない、、、?
見れば近い距離に煌々としたJAL516のランディングライトが見えたはず。(C-4やC-6、C-7などはハイスピードインターセクションで角度がついていてファイナル方向は右後方となり、左席の機長からの視認は難しいとは思うが、そのためそれは副機長の責務)
また、夜間とは言え当時は視程も良好だったので管制官は機体の灯火が視認できたはずで、着陸前の滑走路がクリアーであることの最終確認ができなかったのか?
(自身の経験からは夜間の羽田空港への着陸は満艦飾の如く煌々と光る滑走路灯、センターライン灯により滑走路上に存在する航空機(しかも真後ろからの灯火)の視認はほぼ困難だったと思う。
滑走路灯やセンターライン灯は滑走路を照らすものではなく、霧や降雪時など指定が不良な場合でもここに滑走路があると存在を示す灯火なので極めて明る照明なのでこの事故の場合は逆効果だったかと。航空自衛隊の滑走路のように照度の低い(ショボい)滑走路灯でセンターライン灯も無いところでは滑走路上にアラインしたDHC-8を視認できた公算は高いが、、、、)
一つの間違いだけで事故に至らせずに、三重、四重の仕組みが構築されていたはずなのにどれもすり抜けて起こってしまった事故。
残念至極、、、、
羽田事故の双方の機長:
自身の経験からJAL516の機長の立場で想像すると、航空機の真後ろからの灯火は視認は容易ではなく、ましてや民間空港の飛行場灯火は滑走路灯もセンターライン灯も満艦飾のように煌々と輝いているのでDHC-8の機体を視認することはほぼ困難だっと思う。
何が起こったのか全く認識できずに衝撃を感じたのではないかと。
空自の滑走路のようにセンターライン灯もなく、ほのぼのとした滑走路灯のほぼ真っ暗な滑走路であれば視認できたかも知れないが、、、
一方の海保の機長
報道では「機体が爆発し、自分だけが脱出できた」とのコメント。
まさにファイナル間近に着陸機が存在したことなど認識していなかった前提での青天の霹靂の如くのコメントと受け取れる。
想像では北陸での地震後に何度も支援資材を空輸してかなりの疲労もあったのではなかろうかと察する。
自身も東日本大震災の後は会社の社有機で、福島空港に花巻空港に何度も資材空輸をして、疲労や混乱の中で過酷なフライトをしたが、それとこれとは別問題。いかなる状況下でも安全は確保しなければプロとは言えない。
海保機に離陸許可?
報道では海保機の機長は事情聴取に対して「離陸許可が出ていた」とのコメント。
しかし、C-5までの地上滑走を許可されたのは、海保機が羽田空港の北の端にある旧整備場から地上滑走を開始して南下してA滑走を横断する時点でA滑走路の周波数118.1で発出されており、離陸するためには彼が離陸するC滑走路の管制官の周波数124.35に移行した上で管制官から「Line up and wait」と指示が出され、その後に全ての状況がクリアされていることを管制官が確認した上で「Cleared for takeoff」と発出される手筈であり、何を今更そんなことを、、、としか言いようがない。現時点では誤認識に誤認識が積み重なっているとしか考えられない残念なコメントである。